【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
私と栞ちゃんは、すぐにその背中を追いかけた。


廊下の真ん中。立ちすくむ西田さんの後ろ姿を、栞ちゃんと私で、ぎゅっと抱きしめた。



「……かっこよかった」


そう言ったら、西田さんは、子供みたいに泣き出してしまった。


「ほんと、こんなかっこいい友達なかなかいないよね」


栞ちゃんはそう言って、西田さんの背中をポンポンと叩く。


「私たちがいるから、もう大丈夫だよ」


「……ほんとに?なんか頼りないんだけど」


涙混じり声だけど、西田さんらしい言葉だなぁ。


「力はないかもしれないけど。絶対に西田さんを裏切らないよ」


「うんうん。もう、うちらでいいじゃん。わたし、西田っち、初めて会った時からすきだよ!」


「……葉由、栞、ありがとう」


そう涙ながらに言う西田さんに、何かが胸に迫る。


……喜びより強い、そういうもの。


泣きたくなる。


栞ちゃんも同じく、涙を堪えている。


どん底で見た痛みが、いつか誰かのためになるなら。


私の人生がまだ続いていることは、無駄じゃなくなるのかもしれない。


蓮がくれた命だから、絶対に、生きなきゃいけないものだから。


どうせ生きるならこうやって、誰かのためになりたい。


縋り付くように泣く西田さんを抱きしめて、思った。



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