【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。

そんな三人組で、バイオリンを構えた。選択音楽、発表日。


一生懸命弾いたきらきら星は、音程はめちゃくちゃ。演奏しながら笑ってしまったけど、無事に発表を終えた。


「次は背伸びしない楽器にしよ!」と西田さんが笑い飛ばす。


「だね!」


栞ちゃんのツインテールが楽しそうに揺れている。


それなのに、私一人だけ、楽しそうにできない。


だって、もうすぐ夏休みだから。


「はぁー。明日は球技大会で、あさっては終業式だね」


「まっじ夏休み最高!」


「えー二人ともいいなぁ、わたしは部活三昧なのに」


「私、夏休み嫌だな……」


「「なんで!?」」


そ、そんなに身を乗り出さなくても。


バイオリンの手入れをして、ケースに仕舞いながら、「みんなに会えなくなるから」と答えた。


「なんで?会えばよくない?」

「え?」

「あぁ、大賀にってこと?」

「ううん、みんなに……西田さんと栞ちゃんと……うん、大賀君も」

「うちらは普通に会おうよ?ねぇ栞。会う気だったよね?」

「うん。だってわたし午後結構暇だよ?」

「本当に?」

「葉由は家遠いから、中間地点で遊ぼうよ」

「いいの……?遊べるの?」


西田さんがにかっと笑って、私の頭をぐしゃぐしゃにした。


「葉由って、へんなの!だいすき」

「西田さん……」


ふふっと笑みがこぼれてしまう。
……学校が楽しい。


こんな日が来るなんて、思わなかった。




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