【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「歩けんの?」

大賀君の声で我に返った。

傍にいるだけでこみ上げるときめきに、胸が痛くなる。


「うん。歩ける」

「でも捻挫だよね?帰りどうすんの?」

「両親もまだまだ仕事だから……ふつうに帰るかなぁ」

「じゃあ送っていくよ」


大賀君は当たり前みたいにそう言ってしまったけど。


「私の家遠いの。二時間かかる」

「前に言ってたね」

「うん、だから悪いし、大丈夫」

「だから、大丈夫じゃないんでしょ。二時間だよ?いいから。送ってく」


少し強引で子供っぽい言い方だ。
少し笑ってしまった。


だって、いつもの大賀君っぽくないんだもん。


「じゃあ……おねがいします」


「それでいんだよ」


得意げにニッと笑った顔に、簡単にきゅんとする。


「腕、つかまる?」

「大丈夫。でもありがとう」


大賀君とふたりきりの帰り道。


私の荷物を持ってもらっていて、申し訳ないけど。


だけど、捻挫してよかったって思うほど……嬉しい。


「葉由ってさ、本当に変わったよね」


「え?そう?」


「うん。マリちゃんのもめ事あったじゃん。あの時、廊下に出てった三人をこっそり見てたんだけど」


「見てたの……」

「ごめん。心配だったし。勿論マリちゃんも栞ちゃんもかっこよかったけど。あんときの葉由には、なんか俺すげー感動した」


「……な、なにもしてないけど」


「してたしてた」


横目で見て、柔和な笑みを浮かべる大賀君に、「そんなことないと思うよ」なんて呟いて、下を向く。


「俯くのは変わんないね」


クスクスと大賀君が笑っている。



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