【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「でも、大賀君もなんか違うよ」

「ほんと?」

「うん……なんだろう……。なんか、無邪気になったというか……」

「まー、そうだね。結構、作ってたよね。彼女にはかっこよく思われたかったから」

「十分かっこいいのに」


って、声に出てた?


大賀君を見上げる。その横顔にあるのは戸惑いと、少しの照れ。

……声に出てた!


「なんでもないよ」

「プ。葉由って……ほんとに」


くつくつと笑う大賀君が、無性に愛しい。


……もっと。もっと。幸せに笑っていてほしい。


「……優ちゃんに会いに行く“準備”はできたの?」


「うん……。もう少しで、できる。実はさ、カムのメンバーにも昨日、優ちゃんのこととか、色々話したんだ。みんな応援してくれてる」


前を向く彼に、もう迷いは見当たらない。


「俺は絶対に、優ちゃんのこと……諦めない」


胸の中に湧き上がってくる苦しさを押し殺す。


そうやって、私は強く頷いた。


……やっと、大賀君は、進むんだ。



< 156 / 206 >

この作品をシェア

pagetop