【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。

Candy Rain


夏休みに入った、7月末。


グループLINEの画面は、明日のカムのライブのことで盛り上がっている。

栞ちゃん:ライブってどんな服で行くの?部活のまんまでも大丈夫?

西田さん:部活終わりの格好で来る人多いよ!私服と半々!


14:00だよね?と送ると、YESと、遅刻だめ!という可愛いスタンプがふたつ送られてきた。


……久しぶりに大賀君に会える。
そのうえ、また歌が聴けるんだ。


心の奥からふつふつと湧き上がる気持ちに、居てもたってもいられなくて。


明日の準備を全部済ませて、カムの曲を流す。


大賀君の声と重ねて、口ずさむ。


……のどが痛い。
風邪……?


私は眉をしかめて、一階のリビングへ降りた。


キッチンには、野菜を切っている母が立っている。


「お母さんトローチってある?」


「え?風邪?」


さっと手を止めて、私の額に手を当てる。


「熱はないわね」


「大丈夫だよ。でも喉が痛くて」


そう言って、額に乗った手を軽く払った。


「ちょっと待ってて」


調理を中断されたお鍋から、湯気が立っている。


「あったあった!」


満面の笑みで、母はトローチを掲げている。


私のことを誰よりも心配してくれた母。
私はもう復活したのに、今でも少し過保護だと思う。


「風邪薬も飲んでおいたら?葉由は毎年、夏風邪ひくんだから」

「うん……。明日は用事があるから、飲んでおく」

錠剤をごくりと飲み込むと、喉の奥に痛みが走った。続けて、トローチを口に入れる。


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