【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。



「大賀君たち緊張してるかな」

「内海はいつも震えてるって言ってた」

「そりゃそうだよね……」

「あーそうそう栞ぃ、葉由熱があるんだって!ちょっと気を付けてあげよ」

「えぇ?熱?大丈夫??」

「平気。ありがとう」


もう全然寒気はしない。喉が痛い以外に症状はないから。


そんなこと忘れて、楽しもう。


さっきまでのグループが袖に入ると、空っぽになった眩しいステージが、胸を躍らせる。


「次だね……!」


中三のときみたいに、あっという間に終わってしまうのかもしれない。


だから、ひとつ残らず、胸に刻んでおくんだ。


大賀君たちが袖から出てきたときは、もうすでに歓声がすごくて。
カムがどれほどずば抜けて人気が高いのか、思い知らされた。


栞ちゃんも、西田さんも、きっと私も、きらきらと輝いた瞳で、ステージを見ている。


マイクの傍で、ギターを構える大賀君。


こっちに気付く訳もないけど、私の目だけは、彼から離れない。


マイクを握って、メンバー紹介をしていく姿。
全然緊張していなさそうで、慣れたものだ。


安心して聞いてられる、彼の声に、耳を澄ませる。


はぁ……っと、熱い空気を吐き出した。


「葉由大丈夫?」

「うん」

「カム終わったら帰ろうね?」


その言葉に曖昧に頷く間も、私は全神経を彼に集中させている。



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