【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「それじゃあ聞いてください!”陽だまりの世界で”!」


大好きな曲が流れている。
みんなには、甘いラブソング。私には、切なくて苦しいバラード。


【ねぇ起きてよ、君に言いたいことがあるんだ】



優ちゃんに、どんなことを、彼は話すんだろう。


甘く切ない歌声に、熱で潤んでいた瞳から、やっぱり涙が浮かび始める。


……沁みる。痛いほど。



【君がすきっていうなら僕は
はり合うみたいに言うだろうね
そんな好きじゃまだまだ
僕に勝てっこないよって】


そんなに深い愛情をもらえる、大賀君の好きな人に、なりたかった。


はぁ……。さむい。
ぶるっと背筋が震える。


「葉由大丈夫?」

「うん」

ぼうっとする。それに寒気も。


ああ、熱が上がってきた。音が……わんわんと響く。


身震いしているうちに、一曲目が終わってしまった。


「ありがとー」


マイク越し。大賀君の声に、会場は簡単に湧き上がる。


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