【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
大賀君はそのままマイクを握る。


「今日は一応イベントというか、キャンディレインなので、まぁ恒例。飴投げまーす!」


そのいたずらっぽい笑みに、つられてしまいそうだ。



「……恒例なんだ?」


大賀君たちはたくさん飴が入った大袋をひとつずつ持って、ステージの前の方に立つ。



「いくよー!」



飴が降りはじめた。とても楽しそうに、降っている。


生き生きとした四人の姿。
あぁ、やっぱり、青春の真ん中。


恵みの雨を降らせる神様がいるとすれば、こんなふうに生き生きとしているのかもしれない。



「奥の子―!とどけぇー」


マイクを通さない笠間君の声。
大きく振りかぶる。シャワーのような飴だ。


ポンポンと小雨を降らすのは、栗原君らしい。



内海君は愛嬌溢れる笑顔で、めちゃくちゃに降らせている。



大賀君のは、空中に弧を描く。
虹を作るみたいに。



でもこっちには、届きそうもない。


そう思った時。
大賀君が、目線をこちらに飛ばした。


キャッチボールの投球みたいに、肩を引いたと思ったら。


「……葉由!」


その声は、マイクを通して、会場に大きく響き渡った。

「あ、やべ」その声もマイクを通じている。


放物線を描いて振ってきた、飴の雨。


私は両手で捕まえた一粒を見て、笑ってしまった。


胸の奥からこみ上げる……嬉しさに。


「えぇーっと?今、声入りました?」


大賀君は照れ隠しのようにおどけている。


「はいったはいった!」と内海君が笑い飛ばした。


「すみませんでした!えっと、じゃあ、飴もくばったことなので……」


そこで言葉を止めた大賀君は、視線を笠間君へと移した。


笠間君は頷き、自分の傍のマイクを手に取って、口を開いた。



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