【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「次の曲なんですけど、大賀が命かけてるところがあるんで、心の準備のために、ちょっとMC代わります!」


会場はなんだかざわつき始めた。準備。その言葉にピンとくるのは、私だけだろう。


優ちゃんの、なにか?


ふと、笑みが消える。


ううん、違う。
応援するんだ。ぜったいに。



今日、彼は進む気だ。


もう一度きゅっと、口角を上げた。



がんばれ!そういう目で、ただ彼を見つめる。



「この曲は、作詞をボーカルの大賀が、作曲を大賀とギターの栗原で、作りました!」


“えぇー!すごーい!!”と、あちこちで声が上がっている。
羨望のまなざしが一気にステージに集まった。


「メンバー的には、この曲が今までで一番の出来栄えになったと思います。本気で、今日は演奏します!」


会場はどんどん期待で熱くなっていく。


「ただ、さっきも言ったんですけど、大賀にとって……結構な曲なので。もし大賀が歌詞飛んじゃったり、感極まっちゃったりしても!皆さん暖かく応援してやってください!!」


「泣かねーよ」と大賀君の声がはいったけど、観客はみんな満場一致で「任せてー!」だ。


すごい、カムはすごい……。


ステージの上の青春と友情に、私の心臓は痛いくらいに動いている。


その脈に乗っかるように、ずきんと頭に痛みが走って顔をしかめた。


そのままずきずきと、痛み出す。



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