【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。

小4くらいかな。習い事を全部やめて、毎日遊びたいと愚痴をこぼした俺に、葉由は言ったんだ。


「千颯くんのピアノも、バイオリンも、歌も、私は大好きだよ。すっごくきれいだから」


思えばアレは、恐れるべき対象の俺に対する、ご機嫌取りだったのかもしれない。


だけど、そんな言葉で、俺は……今もまだ、音楽を続けている。



そして高学年になって、何がきっかけだったかは、覚えていないけど、俺はやっと、葉由をいじめるのをやめた。


優しくしていたら、葉由は簡単に懐いてくれて、「はーくん」とまで呼ぶようになった。


教室のキーボードで連弾した“ラ・カンパネラ”。何時間も一緒に練習した。



あのきらきらとした時間は今も俺の中に残っている。


葉由は、弾けることさえ忘れてしまったけど。