【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
そういえば最近、選択音楽でバイオリンを、ドからオクターブ先のドまで弾けるから葉由は天才だ、なんて騒がれていたけど。


何もかもを忘れても……体は覚えているんだね。


だって……葉由は、きらきら星を弾けたんだから。


音楽部でバイオリンをやりたがった葉由に毎日特訓した。あーでもないこーでもない、俺のスパルタに、葉由は笑っていた。


……すごく楽しそうだった。


俺のこと好きなんじゃないかって、勘違いしてしまうほど。



学校の教室にあるキーボードで連弾したときみたいに、ピアノが弾きたいって、葉由が提案した日。


葉由の弾くピアノの運指が気になって、俺は、その指に触れたんだ。



そしたら、反射的に手をひっこめた葉由の顔が、嘘みたいに真っ赤に染まっていった。


「……っ、ごめん!」


思わず謝った俺に、葉由は「あ……うん。ごめん」と気まずそうに笑みを浮かべる。


俺も、つられるみたいに真っ赤な顔をして。


だけどそんなの絶対に見られたくなくて、すぐにそっぽを向いて、部室から飛び出した。



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