【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
夏休み某日……引っ越しの日。


ようやく腹をくくった俺は、早朝、葉由に電話をかけた。


「最後に会えないかな」

「でも今日は……蓮の野球の試合があるんだ」

「あぁそっか。でも、俺、今日引っ越すんだ」

「え……もう?」


語尾の涙声に、つられそうになる。



「……どうしても会いたい」



この言葉が、俺の一生の後悔のはじまりになる。



「わかった。今から蓮にお守り渡しに行こうと思ってたから……相談してみるね」


そう言って電話を切った葉由の声が不安そうだったから、俺も蓮の家に行こうと、家を出た。


まだ朝なのに、昼みたいに日差しが強い。


ぎらぎらと照り付ける太陽の下。交差点にさしかかる。



目の前の赤信号。立ち止まっていると、横断歩道の向こう側を、葉由が走っている。


その後ろには、追いかけるように走る蓮の姿。


「……え……、喧嘩?」


思わず声がでた。


蓮は、葉由の腕を引きとめる。


横断歩道手前、赤信号を待つ間、二人は何かを話している。


だけど何を言っているか、ここからじゃ全く聞こえない。



早く青になれよ。ふたりの喧嘩なんか、初めて見る。


……ピカっと信号が、青になった。



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