【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
◆
今、眠っている葉由は、どんな夢をみている?
怖い夢見てない?
凝りもせず、また、病室に入った。
葉由の両親がいない……。一旦帰ったんだろうか。
パイプ椅子に腰を下ろして、数分後だった。
再び葉由が目を開けた。
「葉由……」
俺を見た葉由は目に涙を浮かべている。
「はーくん……」
その声にため息がでる。
まだ俺のことを覚えていてくれた。
「……具合、大丈夫?」
葉由は静かに頷いた。
「どこまで思い出した?」
「わかんないけど……はーくんのことは、一通りわかる。いじめっこで……でもほんとは優しくて……音楽センスのずば抜けた、幼馴染……」
やっと……。やっとだ。
震える唇をかみしめる。
両目に浮かんでしまった涙が、瞬きに負けて、零れ落ちた。
「ずっと……思い出せなくて。ごめんね……」
消えそうな涙声。葉由は肩を震わせた。