【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
君がくれたエール
◆
私は、ズルかった。
蓮と付き合っているのに、音楽部で毎日を過ごすうちに、はーくんのことが気になりはじめていた。
最初は、はーくんの演奏する音や姿を単純に好きなんだと思っていた。
けど、そうじゃない。はーくんといると、心臓がおかしいくらい速まる。
「蓮、話したいことがあるの」
「今日は無理。今度ね」
その今度は、全然来ない。
でも蓮は気づいていたんだ。
だから……あの日。
「はーくんが今日引っ越すの。だから、話してきたいの」
「でももうすぐ電車乗らないと、試合に間に合わないだろ」
「応援……途中から行ってもいい?」
「……でも約束しただろ」
蓮は、どうしても私に、はーくんのところに行ってほしくなかったんだ。
わかってるのに……。
もう埒があかないって思ってしまった。
「だけど……今日はいけない!」
そう言いきって、逃げるように家を飛び出した。