【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「蓮……」


真っ白な布団が濡れていく。



……私が、蓮を裏切ったから。


はーくんを好きになったりしたから。


だから蓮は……。



はーくんは私の肩を叩いた。


「本当は、葉由が俺を思い出したら、葉由が壊れるかもって言われてたんだ」


「……そう、なんだ」


「だからずっと他人のフリをしてきた。だけど……。どうしても、葉由に思い出してほしかった。諦められなかった。ごめん」


 溢れる涙を拭い続ける私の手を、はーくんはぎゅっと握った。

「葉由のこと……どうなっても、俺が支えるから」

 
力強い声。大賀君だ。はーくんだ。混乱する。頭がめちゃくちゃだ。


 どうしようもなくなって、わっと声をあげて泣いてしまった私の背中を、彼はずっとさすっている。


 懐かしくてたまらない。


はーくんがいる。

どうして忘れてしまったんだろう。


私はずっと、彼を求めていたのに。


大賀君と過ごした日々を巻き戻す。


「あ……」と呟いた私に、はーくんは首を傾げた。


「はーくん……優ちゃんは……?」

「まだ混乱中?葉由のことだよ。Youっていってんじゃん」

「はーくん……」

 涙に混ざって、ふっと声が漏れた。そういう発想は、いたずらが大好きなはーくんらしい。


「私、事故の直前、蓮に応援されてた……。呆れるみたいに。はーくんとのこと『もういいや、頑張ってこいよ』って。そう言って、私の肩を押して、事故から守ってくれた」



「あいつ……なんなの。どこまでもヒーローぶりやがって」



はーくんは、膝に置いた拳をにぎりしめて俯くと、ぽたぽたと涙を落とした。



「なんで死ぬの?ヒーローが死んだら、元も子もないじゃん。地球の平和、守ってから死ねよ。ばかじゃないの」


私が一人で苦しんでいる間、はーくんは一人で、もっと苦しんでいたんだ。


何もかもを……失わせてしまった。


「……はーくん、ひとりにして……ごめんね……っ。辛いときに、忘れちゃって……ごめん……」


はーくんは首を横に振る。


「葉由のせいじゃない」って何度も繰り返しながら。



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