【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
涙でぐちゃぐちゃな目と目が合っている。



「……蓮を産んでくれて、13年間あんなにやさしいひとに、育ててくれて……私たちに会わせてくれて……一緒にいさせてくれて、ありがとうございました……。蓮と過ごした13年は……私の一生の、宝物です……」

泣かずに言いたかったのに、涙ながらになってしまった。

「葉由ちゃん……ありがとうね……」

ぎゅっと抱きしめられた。

蓮の野球部のユニフォームから香った、柔軟剤の匂いがする。……懐かしい。

蓮のぬくもりを思い出したくて服をぎゅっと握りしめる。

 おばさんも私も、もう二度と、こんなふうに蓮を抱きしめられない。

 そう思ったら、無性に悲しくなって、わんわんと泣いてしまった。



蓮の遺影の前で、手を合わせた。


泣きすぎてごめんね。心配しないでね。あの事故から、私はね……。


今までのこと、全部話した。



……時間が動き出して、進んでいく。 私のも、はーくんのも。だけど絶対に、いつかは追いつくものだから。


「蓮。また、会おうね。待っててね」


 命は、宝だ。それがあるだけで十分なんだ。


何かに悩んで、立ち止まって、逃げて……辛いことばかりの人生になったとしても。

いつかどこかに差し込む光を、私は絶対に信じたい。

生きることからは逃げ出さない。


それは、蓮が応援してくれているはずの、私の人生だと思う。



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