【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
◆
新学期が始まった。九月最初の登校途中。
私の隣には、はーくんがいる。
そんなのずっと当たり前だったのに。そう思いかけて、ハッとする。今日を生きられる当たり前なんて、どこにもないんだ。
だから、前を向く。もっと、もっと前を。
未来を歩くんだ。一秒をただ目指して、一秒を愛して。
「はーくんの歌に“君が好きっていうなら……”って歌詞あるでしょ?」
ゆっくりと歩く、木漏れ日の道。ふたりで、口ずさむ。
【君が好きっていうなら僕は
はりあうみたいに言うだろうね
そんな好きじゃまだまだ僕に
勝てっこないよって】
「これも、私に向けて歌詞を考えてくれたの?」
「……うん」
「それは違うよ……。私の方が勝ってるよ」
「んなわけない。俺の方が、絶対勝ってる」
お互いに呆れるみたいに、ふっと笑う私たちは、ぎゅっと手を繋いで歩いていく。
いつか、夢見た時間が進みだしている。