【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「じゃあ俺帰るわ。また明日」

私に片手をあげてそう言うと、大賀君は鞄を持ちあげて踵を返した。


……待って。


と思った時には、追いかけていた。
いやそれどころか大賀君に向けて、うんとまっすぐ手を伸ばしている。


「え?何?」


振り向いた大賀君は、目を丸くしてこっちを見た。


……だって私は今、大賀君の背中を掴んでしまっているんだから。


反射的に手を引っ込めて「あの……」と、小刻みに震えだした手をぎゅっと握りしめる。

すぅっと吸い込んだ空気。


声帯がうまく震えないみたいに、かすれかけの小さな声で。



「大賀君……」と呼ぶのが、精一杯。


そんな私を察するように、大賀君はこっちを向き直す。


「ん?」


さらっと揺れるアッシュブラウン。首を傾げ、優しく目を細める。


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