【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
◆
大賀君が隣にいる生活はもう一週間が経とうとしている。なんだか勿体ないほど時の流れが早い。
緊張とフワフワ浮いてしまいそうな気持ちとちょっとの不安でいつも心が騒がしい。
「葉由ごめん、教科書見せて」
大賀君の声を聞くだけで、もうこんなに脈が速まる。
「……うん」
机をくっつけて、教科書をふたりの真ん中に置く。
いつもより近い距離感に、私ばかりが緊張している。
チラっと視界に入れた真面目な横顔は、黒板の文字を追っていた。
無意識って言うのは怖い。
いつの間にか私の視線は、誘い寄せられるみたいに彼を凝視していたらしい。
横目で私を確認した大賀君と目が合った。その瞳は、吸い込まれそうなほど綺麗で……。
微笑を口角に浮べて「こっち見すぎ」なんて言われて、やっと気づいたくらいだ。
「ごめん……!」
シャーペンをきゅっと持ち直し、急いで板書を追う私に、大賀君はクスクスと肩を震わせている。
そういう時、こみ上げてくる温度の高い気持ちを悟られたくない。
だから俯いているのに。大賀君というのは本当に容赦ない。
「その顔見せて」
そんなことを彼に言われたら、この情けない顔をあげるしかなくなる。
「なんか、そそるね?」
大賀君の一言は、大したことなくて、過激すぎる。
本能的にしているだろう、そのいたずらっぽい顔が、簡単に私の心臓を刺激するなんてこと、彼は気づいていない。
本当に、魔性。