【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
……ううん、たしかに聴こえる。
風上。
まるでその歌声に誘われるように、私の足は勝手に進む。



「ねぇもう始まってるよ!」
「部活サボればよかったぁー!」
「ほら早く!急げ―!」



後ろから聞こえてきた嬉々とした声。それは人混みを縫って、駆け抜けていく。


視界に入った茶色いスカート、スラックス。さっきからやけに見かけるこの制服。


私でも知っている有名な学校、星津学園の中等部、高等部の生徒たちだ。


……学校の行事でもあるの?
きらきら、きらきら……どれだけまぶしいの。


両肩に手をやりフードをかぶる。深く。人目から隠れるように。


きらきらうるさい人混みの中。
身を縮めて、流されるように前に進む。


薄暗い路地裏へと続く、人の流れ。制服、私服、みんな……白い建物の中へと消えていく。



行ってみようか、辞めようか……。

悩みながら、その背中をしばらく見送った。


行ってみよう。このさい、どうなってもいい。
自暴自棄。それは軽く、ポンと背中を押した。


じりっと踏み込んだ地面から踵を離し、ようやく一歩、踏み出した。



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