【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
音と彼の世界
◆
付き合って二週目。
最近、大賀君は忙しい。
音楽で頭がいっぱいなのかもしれない。一日中、イヤホンをつけて、音楽を聞いている。
一限、先生は朝に似合う静かな声でとがめた。
「大賀君、授業中ですよ」から始まって、六限「大賀!!いい加減にしろ!!」で終わった。
それでも彼は、貫いた。
音楽から抜け出さない。
ぼうっと聴いているだけかと思えば、おもむろにスマホを操作したり、ノートにメモをしたりと、なんだか慌ただしい。
授業はまるで聞いていない。心配になるくらい、聞いていない。
こういうのは、もう三日目。
休み時間。
隣から聞こえてきた、カツ、カツ……とリズムをとるように指先で机を叩く音。
大賀君は真剣な顔で遠くを見ている。
私の視線に気付いた大賀君が、片耳からイヤホンを引っこ抜いた。
「ごめん。うるさかった?」
私は大袈裟なほど首を横に振って「邪魔してごめん!」と謝った。
「全然。邪魔じゃないよ」
大賀君は立ち上がると、腰に手を当てて背筋を伸ばし、ふぅっと溜息をついた。
かと思えば「昼休みは暇?」とこちらに笑みを向ける。