【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「じゃあ何?内海と笠間はどんな曲なら満足すんの?」


大賀君の苛立った声に心臓が速まる。


こんなふうに怒るなんて、知らなかった。


「……いつもたいして意見出さないわりに、文句ばっかいうよな!」


大賀君が丸めた五線譜を床に投げつけた。


びくっとしたのは、私と栞ちゃんだけ。カムのメンバーの間には、重苦しい空気が漂うのみ。


その空気でなお、内海君が「前のやつ以下って感じがするから。それだったら俺は、カバーでいいと思う」と言い放った。


「具体的にはどうすればいいの?コード変えてけばいい?」


栗原君の冷静な質問に、今度は内海君ではなく、笠間君は声を荒げる。


「全部だよ!なんか、ぱっとしない。なんだろう……悪いけど、いつもより雑じゃね?」


「……はぁ?」



大賀君の手が、笠間君の胸ぐらを掴んだ。


「……あっ」


私の短い声が、廊下に響いてしまったとき、大賀君たちの視線が一気に注がれる。


大賀君は私を見てすぐに、目をそらした。


「……っ」


大賀君の手が、笠間君から離れた。



きまり悪そうな顔をした大賀君は、「ちょっと……考える。ごめん」と足早に去っていく。



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