【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
一瞬の静寂の後。拍手と歓声で会場は満たされた。


茶色い制服を身にまとったボーカルが、ギターを肩に下げて、マイクを握る。


バンド名は”COMETOGETHER”(カムトゥギャザー)で通称"カム"だと名乗った。


『次の曲は、俺たちの中学三年間の集大成っていいますかね?かなり練習頑張ってきました!』


どうやら彼らは、星津学園の中等部の三年生らしい。まさか、だった。学校は違うけど、同じ中三だなんて。




ステージに立つ四人のメンバー紹介。ソロが鳴る。会場が沸く。
「最後に俺が、ボーカルの大賀(おおが)です!」もっと沸く。


目が吸い込まれた。ボーカルを上から下まで見てしまう。
お洒落に着こなされている茶色の制服。すごく印象的だった。


制服ってあんな感じなんだっけ……?


クローゼットにひっかけられたまま出番がこない私のセーラー服を思い浮かべたら、あまりに反対側。可哀想になる。



マイク越しに聞こえる声。
魔法みたいだ。会場をどんどん熱く盛り上げる。



そうなればなるほど、周りに置いていかれて。
まるでひとり、遠くの星でも眺めているかのように、私はただ静かに彼らを見ていた。




『それじゃ、聞いてください“陽だまりの世界で”!』


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