【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
凪をふたつ乗り越えて、今がやっと六限、現代文。


教室の半分が、寝てしまっている。
現国の先生は、そういうのをいちいち咎めない。


「――とありますが、ここで豊太郎は……」


絵本の読み聞かせのような、のんびりした声と心地のいい気温。


眠たい。もう限界。瞼が、どんどん重くなる―――。


―――――――
――――

朝なのに、もうすでに真夏のように日差しが強かった。


左利き用のグローブが、エナメルバッグの上に乗っている。


今まで何度も見た……これは、“あの夢”だ。


野球部のユニフォームを着た蓮が玄関先で、珍しく声を荒げる。


「でも約束しただろ?」


「だけど……今日は行けない!」


そう叫んで、私は蓮の家を飛び出した。


――止まれ、止まれ、絶対に道に出ないで……!


私は私を止めようとするけど、体はいうことを聞いてくれない。


後ろからスニーカーの音が近づいてくる。


――来ないで!蓮!!


そう願っても、もう腕を掴まれてしまった。


差し掛かる交差点。


横断歩道の向こうで、ぎらぎらと太陽が輝いている。


もう、だめだ。


だって、次の瞬間には――――。



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