【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「葉由?」


その声に心臓が跳ねあがる。
本能的に大賀君だとわかっている。
本当に最低だ、私は。


「そんなに怖い夢だったの?」


やさしい声が沁みて、じんじんする。


だけど彼は、いつもみたいに私の傍に寄り添うことも、触れることもしない。
「俺になんかできることある?」とだけ呟いた。


「……歌ってほしい……」


涙混じりの声にならない声で、そう訴えた私の隣で、大賀君は息を吸った。


呟くように聞こえてくる甘い歌声。だけど今日は、端々に感じる寂しさが尋常じゃない。


どうして、彼の声は。
こんなに切ないのに、もっと欲しくなるんだろう。


「あはは!わかるそれ!」
「だろ!?」


廊下のずっと先から聞こえた声。


ぴたっと、歌が途切れてしまった。


「……えっと、このくらいでいい?」


「うん……ありがとう。元気出た」


涙をハンカチで全部拭って立ち上がる。


無理やり笑ったへたくそな笑みに、大賀君は同じくらい無理やり笑ってくれた。



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