【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「蓮は……!」


私は大賀君の背中に叫んでいた。


振り返った彼の視線は、私に留まっている。


「蓮は……、もうこの世にいないひとだから……」



だから……?


―――だから大賀君のことが一番好きだというの?




胃の底からぐぅっとこみ上げてきた嘔気にうずくまる。


「葉由……?!」


「……う、ぇっ」


えずいた私の傍に、大賀君が駆け寄ってくる。


「来ないで……」


背中をさすり始めた大賀君の手を払いのけた。


「……う」


口に手を当てて、すぐ傍の女子トイレに駆け込む。


個室についた瞬間に嘔吐した。


「……はぁ……っ、おぇ……っ」


嘔気は追い打ちをかけるように、次々と胸を突きあげてくる。


胃の中が空っぽになっても、吐き気がやまない。


「うぇ……っ」


いつの間にか冷え切っていた手のひら。



手すりを掴んで支えられていた体が、ずるずると壁を伝って崩れていく。


「葉由!大丈夫!?」


遠くから、ずっと大賀君の声がしている。返事しなきゃ。大丈夫って。


……指先がしびれる。


目の前が真っ白になっていく。


重くなった瞼をおろして、意識を手放した。



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