【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「葉由ってどこ中から来たの?内部生じゃないもんね」


内部生っていうのは、内部進学生。
大賀君みたいに、中学から星津学園に通っていてエスカレーター式で高校に上がった人のことを言う。


勿論、私は違う。外部から来た外部生だ。


「……えっと、道森中」

「みちもり?どこそれ?」


きょとんとした顔で西田さんは栞ちゃんにたずねる。


「葉由んち遠いんだよ。電車で二時間かけて来てんの」


二本指を立てた栞ちゃん。それに目を見開いて、Vサインを突きつける、西田さん。

「まっじ、二時間!ってことは毎日四時間電車乗ってんの!?」


「うん」


「出会った中で最長かも!1時間半の子はたまぁにいるけどさぁー」


西田さんのオーバーリアクションに、できるだけ自然に笑顔を貼りつける。


「なんでこんなとこまで来たの?」


「ええっと……なんでだろ」


言葉を濁してしまった。


……本当はここしか行く場所はなかったと言えるほど、明確な理由があるのに。


「あ、やば。先生来た!」


西田さんの声に、慌てて席に着く。
席順に決まりはないから、西田さん、栞ちゃん、私と並んで座った。



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