【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
真っ赤で、情けない顔をしたまま、「大賀君のこと、大好きでよかった……」と声が出てしまった。


「そんなに好き?」


しがらみも、過去も、私の中の私だって、そうなっては駄目だと警告しているのに。


だけど、それを越えてしまうくらい。


もう押さえられないほど、大好きだよ。


……そうなっていいわけがないのに。


ぐっと切ない気持ちを抱えたまま、大賀君を見上げる。


「……そんなに好きに、なっちゃったよ」


「……っ」



私は、目を見開いた。


大賀君の顔が、みるみるうちに真っ赤に染まっていったから。


「……あーもう。見んな!」


くしゃくしゃっと私の頭を雑に混ぜて、その背中は音楽室へ入ってしまった。


「ちょっと……ちょっとぉー!葉由たちやばぁい」


西田さんは満面のにやけ顔で私を小突いている。


「あんな大賀初めて見た!きゅんとした!」

「ちょ、内海くんそこにいるんだから」

「聞こえない聞こえない。うわーそっか。大賀、まじのまじで本気なんじゃない?」


「ど、どうだろう……。いつもからかわれてる感じなんだけど」


「それがまず今までにはなかったなぁ。今までって、ベッタベタする割にかなり冷めてて。楽しく会話してんのによく見たら無表情とかザラだったよ」


しばらく廊下で話していたら、音楽室のドアが開いて、ドラムとギターの音が流れ出てきた。



< 85 / 206 >

この作品をシェア

pagetop