【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「あんまり、他言しないんだよ?大賀怒るから」


しぃっと唇に一本指を立てて笑う内海君。その答えはYESだ。


「まじやばい!大賀と栗原天才じゃん!」


興奮する西田さんの隣で、私もひっそりと大きすぎる衝撃を受けていた。


……大賀君たち、曲まで作れるの?音楽室の後ろに貼ってある、あの作曲家たちみたいに?


曲ってどうやって作るんだろう。見当もつかない。


はぁ、本当に、大賀君は遠い。届きそうで、絶対に届かない。


私はドキドキしながら大賀君に聞く。


「あの、”陽だまりの世界で”は?大賀君たちが作ったの?」


Candy Rainではじめて聴いた、大好きな一曲。


「うん、俺たちで作った」


「あれはほぼ、大賀だろ。俺ノータッチだよ」


「栗原もちょっといじっただろ」


「すごい……」


私は、やっとで、三文字を発した。

そんな小学生みたいなコメントしか声にならないほど、大賀君たちの才能に圧倒されている。


「作詞と作曲をふたりで?」


その西田さんの質問に「作曲は栗原と大賀の二人、作詞は大賀」と内海くんが自慢げに答える。


「内海がドヤんな」って、西田さんにいわれてしょげちゃったけど……。


「よし、休憩しよ。コンビニ行こうぜ!」


笠間くんがそう言って、ベースを大切そうに、スタンドに立てかけた。


「えー雨降ってるし俺いいわ。葉由と待ってる」


大賀君にそう言われて、私は自動的に待機組。


「んじゃ俺も行かない」って内海くんが言ったら、「ばっかじゃないの?空気読めば?」って西田さんが連れ出してしまった。


「……ごゆっくり」と、栗原くんが片手をあげて音楽室を後にする。



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