【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「痛……」


右人差し指、中指、薬指に入った真っ赤な一本線。ぷくっと血が浮き上がる。


急いで左手で抑えた。ズキン、ズキンと痛みが脈打つ。


「大丈夫!?保健室行きなよ!そこ片付けとくから!」


喋ったこともない女子生徒たちが駆け寄ってきた。申し訳なくてとまどっていると。


「……俺が連れてく」


大賀君らしくない、力のない声。だけどいつもみたいに、私の肩を抱えるように、歩き始めた。


大賀君は、喋らない。


……何かあったのかな?
私なにかしたかな……?



不安だけど、でもそうも言っていられない。


右手を抑える左の指の間から、血が滲んでいる。
そろそろ廊下に落ちてしまいそうだ。


「あの……大賀君。スカートの右ポケットにハンカチがあるの。取ってくれないかな」


私の小さい声も、誰もいない廊下では、よく聞こえたはずなのに。


大賀君はワンテンポ遅く、縦に頷いた。


だけど取ってくれることはなくて、案の定、床に血が落ちた。


……いいや、あとで拭こう。


そう思ってから入った保健室。中を見渡す。


こんなときに誰もいないなんて。本当にツイてない。


水道で左手の血を洗い流し、恐る恐る右手に水をかけ始めたとき。


「……葉由」


大賀君がすぐ傍で、消えそうなほど小さい声で私を呼んだ。


「……大賀君?真っ青!どうしたの……!?」


濡れた手から滴り落ちる水のことなんか忘れて、大賀君を見上げた時。


大賀君が床に崩れ落ちた。



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