【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
だけど西田さんがもう二つ同じケースを取って、栞ちゃんにひとつ手渡した。


「いいじゃん、おもしろそうだし。音鳴らすだけしてみようよ!」


本当に軽い気持ちでバイオリンを持ち出して、音楽室に戻った。


「せんせぇー!バイオリンってこうやってもつんですか?」


西田さんのよく通る声が先生を呼んだ。


「肩にこうのせて、顎をここに置いて支えてみて」


栞ちゃんも西田さんも、肩と顎でバイオリンを支えて、なんだかかっこいい。


私も真似して、構えてみる。


「ああそうそう、いい姿勢ね」


先生に褒められると、なんだか気恥ずかしい。


二人は弦を自由にこすらせて、楽しそうに音を鳴らしている。


先生が弦に張り付けたテープを目印に、左指を添える。


わけのわからないアルファベッドだらけの運指標を、目の前に開かれた。


「まず……ほんとうにバイオリン、挑戦するの?」


先生は神妙に聞くのに、

「する、よね?」
「したーい」
「うん」


という、私たちの返事はとても軽くて、先生は苦笑いしながら「そう」と言った。



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