【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
そして、放課後。


第二音楽室の鍵を開けて、中へ進んだ大賀君についていく。


ふたりきりだ。
ドキドキと心臓が鳴り始める。


鞄を部屋の片端に置いてから、大賀君は楽器を取りに準備室に入っていった。


持ってきてくれた黒い楽器ケースを、大賀君は慣れた手つきで開けてしまう。


「弦もヤバければ弓もヤバい」


そう言いながら、弓を手に取ってネジを回す。そして布越しに何かをもって、弓に張った白い毛にそれを塗り始めた。


「それ何?」

「松やに」


松やに、か。なんとなく聞いたことがある。


簡単にバイオリンを構えた大賀君は、弓を引いて高い音を響かせた。


つややかな一音。それは私が授業で鳴らしたものとはかけ離れている。


「……かっこいい」


思わず漏れてしまった声。口に手を当てて俯く私を、大賀君はクスっと笑った。



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