嘘と秘密と交換日記


「……はじめは、

騙すつもりなんてなかったんだよ

でも、途中で訂正もできなかったし

みなちゃんも
『私の名前、好きに使っていいよ』
って、言ってくれた


……、それに


みなちゃん、すごく楽しんでたの


つらい闘病生活の中で、

残り少ない時間の中で、

どんどん苦しいことが増えていく中で、


『まるで、本当に青春してるみたい』
って、すごく嬉しそうにしてた


だから、やめられなかった



日比くんの部活の試合の日だって

みなちゃんは頑張って、いつもより起きてた

私が、電話で実況中継したら、

昔みたいに大笑いしてた

看護師さんに怒られるくらい笑ってた


あの交換日記は、みなちゃんの生きる希望だったの



『やっぱり、私も生きたい』

『みんなと青春してみたい』

『最後まで諦めたくない』
って、



成功の可能性の少ない手術に挑んだの



手術を受ける前に、

麻酔で寝る前に、

みなちゃんは、

『一番おもしろいネタバラシの仕方思いついたから、起きたら教えるね』
って、笑ってた

手紙は、保険として渡されてたの


でも、みなちゃんは……









< 111 / 114 >

この作品をシェア

pagetop