LONELY MOON ―ロンリームーン―
 


俺はその手を振り払った。



「…っ、お前、具合悪ィんじゃねェのかよ?」


「え、」



女は今気がついたかのように、ハッとした。

俺はこの近い距離に耐えられない。

早く離れろ。離れてくれ。

女は、また笑った。



「なんだか、高田くんとお話してたら、良くなっちゃった」


「は?」


「先生、なんだか、大丈夫みたいです!」



美佐子は回転椅子を180度回転させてこちらを向き、「あら、良かったわね」と一言言って、またパソコンに向かった。

女は立ち上がると、そそくさと出口に向かい、

昨日のように振り向いて、俺に言った。



「それじゃあ高田くん

気が向いたら、教室来てね!」



にこり、と笑って、ここを後にしていった。



「…だってさ、魁?」



にやり、とした美佐子が、俺の方に振り向く。

明らかに俺のことをからかっている。



「良かったわねー、友達が出来て」


「…!! う、うっせぇな

別にそんなんじゃねぇよ」


「あらまぁ、照れ屋さんだこと」




…さっき握られた手が熱い。

まだあの柔らかい感触が残っている。

何だ…コレ。




 
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