LONELY MOON ―ロンリームーン―
「ぐあっ」
汚い声をあげて、男は倒れた。
見慣れた血の色。
倒れた男の腹に一発、思いっきり蹴りを入れると、男は完全に気を失った。
…つまんねェ。
いつもならもっと顔面もボコボコにして、もっと地面を赤く染めていた。
だが、今日はなんとなく、そういう気分にはなれねェ。
「…下らねェ」
無意識に、そう呟いていて、ハッとした。
今のは俺が言ったのか?
そう思うも、俺の頭は何も考えられなくなっていた。
…喧嘩の気分じゃねェ、…退屈だ。
昼の日差しが、俺を照りつける。
すると、あの鐘の音が俺の耳に届いた。
キーンコーンカーンコーン…
さすがに今日は馬鹿らしくなって、前のように町へ出て、適当にそこら辺の柄の悪い輩に喧嘩を売って、裏でボコボコにした。
いつもなら、もっと大人数を相手にしてやりたい気分だが、どうもそうはなれねェ。
…なんだ、俺。最近おかしい。
…あいつ。そうだ、あいつに会ってから、何かがおかしい。
学校。
いるだけでムカついた学校も、あの時はなんとも思わなかった。
「…………」
倒れる男共を足蹴にしながら、俺の足は無意識に動いていた。