LONELY MOON ―ロンリームーン―
「…2-B…」
確か2年の教室はここ、な筈だ。
随分と来てない所為で、場所の記憶さえも曖昧だ。
美佐子に聞いたところによると、俺のクラスはここらしい。
2-Bと書かれたそこは、…今の時間帯は5時限目か、かなり静まり返っているようだ。
まぁそんなことは俺に知ったこっちゃねェ、
ガラリ
俺がドアを開くと、一斉に視線が俺のほうへと向けられた。
入ってきたのが俺だと分かると、全員、眠たそうにしていた目が一気に開いた。
それもそうか、今までロクに学校にすら来てなかった奴が突然来たんだもんな。
「…高田くん!」
静まり返っていた教室に、一つの声が響いた。
そちらを見ると、それは一番教室の隅で、俺へ笑顔を向けている、あの女。
聞いたとおり隣の席は空いていた。
…俺の席はそこか。
「…た、高田お前…」
口をぱくぱくさせながらも俺に何か話そうとする教員を無視して、俺はその席へと向かった。
「…来てくれたんだね!」
にこり、と笑うそいつに、何も返すこともなく、俺はドカリと席に着いた。
教室は少しざわつきながらも、授業を進めた。
…まだ横から視線を感じる。
ちらりと横を見てみると、にこにこした表情をしながら、じっと俺のことを見つめていた。
「…んだよ」
「…嬉しいなーって!」
…馬鹿なのか、こいつは?
俺の噂を聞いてないワケがない、俺がどんな奴だか、見るからに分かんだろ?
なのに俺が来て…嬉しい?
普通の奴なら、その逆のことを思うだろう。
おかしな奴だ、全く。