LONELY MOON ―ロンリームーン―
「…~~であるからして」
頬杖をついて、何処を見るわけでもなく、ぼーっとする。
何やら黒板に書かれているが、全くもって分かんねェ。
…教室の雰囲気。久しぶりだな。
必死に黒板に書かれた文字を写している奴もいれば、携帯をいじってる奴、寝てる奴。
午後の昼下がり、このなんともいえない…睡魔の襲ってくる時間帯。
…この時間帯に来て正解だったか。なんとなく心地よい感覚に襲われる。
今にも瞼が落ちてしまいそうな瞬間、前の席から、何やらプリントが回ってきた。
見てみると、なにやら小難しいことがばらばらと書いてある穴埋め問題。
勿論俺に解けるはずもなく、そのまま机に伏してしまおうか、と思ったその時、
「…教えてあげよーか?」
「!!」
隣から俺のプリントを覗き込んできた。
俺はそのことに目を丸くする。
「…ここはね…」
細い指でその小難しい単語を一つ一つ指差していく。
俺はそのことに表情を歪めながら、その指を見つめていた。
女の言っていることは全く耳に入ってこない。
香るシャンプーの香りの、囁くその声に思考が回らねェ。
「分かった?」
その言葉にハッと気を取り戻す。
分かったも何も、筆記用具も持たずに来たんだ、どうすりゃいい?
まぁ、分かってねェんだけど。
何も出来ずにしている俺に気がついたようで、女は俺のプリントに文字を書き込んでいく。
「こういうこと。分かった?」
にこり、
また、笑った。
その視線を外すことが出来ないまま、授業終わりの鐘が鳴った。