LONELY MOON ―ロンリームーン―
talking.
「…くん、…田くん…!」
遠くから聞こえているような声が聞こえる。
細い声がだんだんと、はっきりと聞こえてきた。
「…くん…高田くんっ」
うっすらと目を開けると、視界にはドアップのあいつ。
俺はそれにぎょっとして、一気に起き上がった。
「もう暗いから、帰りなさいって。先生が」
窓を見れば薄暗い景色。
時計を見ると、もうすぐで7時を指すところだ。
美佐子ももう居ない。…帰ったのか?
…あれからかなり寝てたみてェだ。
首を曲げると、余程凝っていたのか、ボキボキと気色悪い音が鳴った。
「私もさっきまで寝ててさ、こんなに時間経っててビックリしちゃった」
帰り支度をしているそいつをぼーっと見ながら、俺もそろそろ帰るか、と重い腰を上げた。
「それじゃあ私帰るね!バイバイっ」
「…おう」
"バイバイ"なんて全然言われなれてねェもんだから、ぶっきらぼうに挨拶を返した。
この保健室には俺一人。
帰るか…っつっても、ただぶらぶらしに行くだけだが。
保健室を出ると、電気が点いていない所為か真っ暗だった。
春といえどもさすがに7時は暗い。
玄関へと歩いてる途中、俺はふと思った。
―――こんな暗い中、一人で帰らせて大丈夫か?
あいつなら、俺みてぇな悪い輩に絡まれる可能性が十分にある。
俺は暗い廊下を駆け出した。