LONELY MOON ―ロンリームーン―
「可愛いでしょう?」
軽く放心状態になっていた俺に、からかうかのように声をかけた美佐子。
不覚にもその言葉にビクンと身体が跳ねた。
「白瀬 陽那(シラセ ヒナ)チャン。2年生よ」
「2年!?…2年にあんなやついたか?」
「転校生よ。アンタ、本当に学校来てないのねぇ」
白瀬 陽那…。
その名前が俺の頭の中を駆け巡る。
俺は頭をブンブンと振り、急いで掛けてあった上着を取った。
「あら、どこへ行く気?」
「…帰る」
「…折角ベッドが空いたのに?」
「うるせぇ」
勢いのままに保健室を出た。
それから喧嘩を買う気にも売る気にもなれず、一晩中ゲーセンや漫喫をうろついていた。
その間の記憶は曖昧としていて、覚えているのはふわふわとした気分だけだ。
畜生、気持ち悪ィな、俺。
こんな気分、久しぶりだ。