【短編】キミに伝えたい好きがある
「私もアキくんに謝るから、女の子だって誤解してごめん、だけど、グラウンドに戻ったら遼ちゃんに、謝ってほしい、お願い」


「ぷっ、なにそれ?奈帆先輩ってほんと、面白い人。俺が素直に謝ると思ってんの?」


からかうような意地悪な表情で彼は笑っている。


「うん、だってアキくんはほんとはいい子だもん。私のこともいっぱい励ましてくれたし」


「ふん、奈帆先輩ってあの久我先輩の彼女のわりには全然普通の人だから、新鮮だっただけだよ、ちぇっ、調子狂うよな」

彼は、うんざりしたように目をそらす。


「お、お願い。お願いします。アキくん」


ぺこりと深く頭を下げたけど、彼からの返事はなかった。


だけど、しばらく顔を上げないでずっと頭を下げていた。


私にも悪いところはあった、きっと騙されやすいぼんやりした性格がいけなかったんだ。


もっと注意深くしていたら、わかったかもしれないのに。


これまで、遼ちゃんを傷つけてしまっていたのかもしれないと思うと胸が苦しくなった。


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