【短編】キミに伝えたい好きがある
「富田っ」
暗闇の向こう側の道から名前を呼ばれて、彼が走ってくるのがわかった。
「遼ちゃん」
遼ちゃんは大きなスポーツバッグを肩にかけている。
だけど彼は数メートル先で立ち止まり、ハアハアと息を整えているみたいだった。肩で息をしていて苦しそうだ。
私の方から彼に駆け寄るとあと数10センチのところで立ち止まった。
商店街の明かりが薄く照らされている彼を見たら、胸が熱くなった。
「遼ちゃん、ごめ・・」
家から全速力で走ってきたから、私も息が苦しくて最後まで言えなかった。
彼は何とも言えない複雑な表情をしている。