ことほぎのきみへ
……会えるわけないって思ってたから



こんなにタイミング良く現れるなんて思わなかったから



びっくりして




「…」




それから




…………すごく、……安心して…………



どうしてなのか分からない

だけど声を聞いた瞬間、ほっとして


空気が軽くなったように感じて


ようやく息ができた気がする




「……泣きそうな感じ?」


しゃがみこんで私を見ていたあの人が
また首を傾げる


「…な、きません……」



今度は安心して、泣きそうだった

だけど堪えて、そう返す


「…」


あの人は何かを考えるようにしばらく黙りこんで




それから




「…」



すっと右手が伸びてきたと思ったら


彼はそのまま


むにゅりと私のほっぺたをつねった



……
……
……


「……………………あの……」


「痛い?」


「…………いや、痛くは……」


真顔で問いかけてくる彼に
私は戸惑いながら言葉を返す


つねると表現するのも語弊があるくらい

ほんとに軽く、つまんでるだけ



全然痛くない



いきなりなんでこんな事をするのか
わけが分からず?マークを大量に浮かべる私



「痛いよね?」

「や、だから痛くは……」


「だから、泣いていいよ」


「…、」




言われた瞬間



彼の意図が分かって



目を見張る
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