ことほぎのきみへ
「たまたま色んな事が重なってしまっただけ」


「……で、も……」


「なにもかも自分のせいにして
痛め付けて傷付けて生きる必要なんてない」


「…」


「そんな風に生きなくていいんだよ」



……
……
……



……ずっと深いところにいた



這い上がれない場所にいた



暗くて、せまくて、息苦しくて



そこに

たびたび、降ってくる痛い雨


それが貯まって


何度も何度も溺れそうになってた




それでもなんとか息をして


溺れないように必死に足掻いて




……
…………暗くて冷たいその場所を



時折、淡く照らす光があった




記憶が、言葉があった





「……っ、」




泣きながら、震える手を伸ばして

その胸にすがり付く





……いつだって




沈みそうになる心を掬い上げてくれたのは




この人なんだ


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