ことほぎのきみへ
……
……
……



「はい、お茶」


「……ありがとう、ございます……」


「何か食べる?
……といっても、大したものないな
あ、カップラーメンならたくさんある」


「あの、ほんとにお構いなく…」





…………どうしてこうなったんだろう……




ふわふわのソファーに腰かけて
キッチンで冷蔵庫や戸棚を片っ端から漁るあの人を眺め、頭を抱える



散々泣き喚いた私


ようやく涙が止まって落ち着いた頃には
あたりはもうすっかり暗くなっていて


暗いし、風も冷たいから
とりあえず場所を移動しようと


泣き止むまでずっと傍にいてくれたあの人に
連れられてやって来たのが


何故かあの人の自宅だった




あの場所から、海から

歩いて数十分くらいの場所に



こじんまりとした
絵本の中に出てくるような
レンガ造りの可愛い家


外観はこじんまりとしてたけど
中は意外と広々として


木目調の内装、それに揃えた家具

カーテンや照明も
落ち着いた色合いものにしているせいか

あったかみを感じる



「…」


「とりあえず、お菓子
それと、はい」



ことんと

テーブルの上に置かれたのは

リボンのついた小さな可愛いバスケット

その中に
一口サイズのドーナツやチョコレート菓子が入ってる


それと一緒に差し出されたのは
タオルでくるまれた保冷剤



……泣きすぎて腫れぼったくなった目を

時折擦る私に気づいてたみたい



「…………ありがとうございます」



そんな細かな所にまで気付いて

配慮してくれるあの人に
もう一度お礼を言ってそれを受けとる
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