ことほぎのきみへ
「…」


苦笑を浮かべながら振り返る

あの人はそんな私を悠然と眺めながら
黙々とリゾットを食べてる


「………夢を、視るんです」

「夢?」

「はい。
…………母を、亡くした時の夢を」






あの時の、無力な自分を

何もできなかった自分を


思い出して


どうしようもない怒りと悲しみが湧いてくる




お母さんのお葬式の日



おばあちゃんはずっと棺にしがみついて離れなかった

泣き崩れて

なんで、どうしてって

どうして助けてくれなかったのと


泣きながら私を責めた


私の娘を返してと


あなたが死ねば良かったのにと


激しい怒りをぶつけた



『あなたのせいで……っ』



向けられる言葉に耐えられなくて
おばあちゃんの声が表情が
すごく怖くて
私はぼろぼろ泣いて、おばあちゃんに謝り続けた


……おばあちゃんにはそんな私の声も姿も
届かなかったし、見えてなかったけど



そんな私を抱き上げて
おばあちゃんから引き離してくれたのが
お父さんだった



『いろはのせいじゃないよ』



私の背中を優しく撫でながら
おばあちゃんの言葉に、表情に怯えて震える私に
お父さんはそう言った



……でも



『……ひっく、うぇーん……!
……ままぁ……どこ……っ……?』


『……置いてかないで』
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