ことほぎのきみへ
幼かった花菜は
お母さんが死んだ事を理解できてなくて
ずっとお母さんの姿を探して泣いていた


火葬場で
運ばれていく棺に向かって

泣きながら、優は

『連れていかないで』と
『置いていかないで』と訴えた




……私のせいだ




私が、奪った






罪悪感と後悔と激しい痛み


悲しくて辛くて


どうしようもなくて




「……それ以来、私はおばあちゃんと会わないようになって」



顔を合わせる度に
辛辣な扱いを受ける私を見かねて
私を守るために、お父さんがそれを勧めた


毎年、 お盆やお正月は皆でおばあちゃんの家に行っていたけど

私は行かないようになった



おばあちゃんが嫌がるから

おばあちゃんの言葉に私が傷付くのを
お父さんが嫌がるから



「……痛いのは嫌ですけど
私は……傷付けて欲しいとも思って……」



みんなが傷付いた分と、同等のものを
与えて欲しいと思った


もっと責めて欲しい


痛め付けて欲しい


そうしてもらわないと私は


今よりもっと、自分を許せなくなるから



…………どうにかなりそうになるから





「……矛盾してるんです……
逃げたくて仕方なくなったり
責めて欲しいと思ったり
なのにその言葉を聞きたくないって思ったり…」



話していて、また気持ちがごちゃごちゃになって


今の自分の本心が分からなくなる




「…」



額に手を置いて、俯く



「……忘れたい、けど忘れたくない
……だから、きっと毎年この時期に夢を視るんです」




『私』が



あの夢を視せる
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