ことほぎのきみへ
どこか悩ましげな表情で、心配するような声で
矢那さんは話す


「ひさとがどうこうじゃないの
ひさとを取り巻く環境が、人が
ひさとに面倒なものを押し付けて背負わせようとする」


「…」


「…まあ、あの子も中々大変って事。
……さて、準備も出来たし
お風呂入って、寝ましょ!」


それはどういうことなのか
問いかけようとしたけど

それより先に

気持ちを切り替えるように
ぱっと笑顔を浮かべて

用意してくれた寝巻きを私に押し付ける矢那さん


「お先にどうぞ」


受け取った私に
お風呂はあっちにあるからと、指差して

矢那さんは自分の分を用意し始めた


たまに泊まる事があるようで
着替えや替えの下着とか
必要なものはある程度
客間のクローゼットに常備してるらしい


渡された寝巻きもそれ



「………はい」


訊ねるタイミングを逃してしまった私は

小さく頷いて、そのままお風呂場に向かった


……
……


『ひさとを取り巻く環境が、人が
ひさとに面倒なものを押し付けて背負わせようとする』


……それは、どういうことなんだろう


『人嫌い』

『面倒な事が大嫌い』


…………そうなった原因が、それだったりするのかな


……
……
……なんだろ……



……なんか、…………もやもやする……




お風呂場に向かう最中も

その後も

私は、ずっと矢那さんが溢した言葉が気になって



あまり、よく眠れなかった
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