ことほぎのきみへ
……
……



「……おはよう」

「おはようございます」

「わざわざ朝食準備してくれてたの?」

「ごめんなさい。食材勝手に使ってしまって…」

「それはいいのよ。ひさとが使うように買ってきたものだから」


キッチンでぱたぱた動いてた私に
やってきた矢那さんが目をぱちくりさせる


早くに目が覚めてしまった私は
昨日のお礼もかねて朝食を作ろうと思い立って

昨日、矢那さんが持ってきた食材を使って
朝ごはんを作ってた



ほっとくと毎食カップラーメンのひさとさんが
少しでも自炊をするようにだろう
矢那さんは度々、冷蔵庫に食材を補充してあげてるみたいだった



「もうすぐできるので
座ってて下さい」


「ひさと起こしてくるわ」


そのままひさとさんの所へ向かおうとする矢那さんを慌てて引き留める


「あ、起こさなくていいです
昨日、私のせいで色々疲れただろうから……」


なんだかんだで
ひさとさんも床に就いたの遅いだろうし…
無理に起こしてもらうのは気が引ける

ひさとさんの分は後で冷蔵庫に入れておこう




「……疲れてないよ」




「ひさとさん」

「あら、珍しい
いつもは寝起き悪いくせに」



眠たそうに目を擦って
矢那さんの背後からひょこっと現れたひさとさん



「……俺の事は本当に気にしなくていいから
疲れたり、嫌だったりしたら言うし」

「…ありがとうございます」



そんな気遣いの言葉に
そう声を返しながらも
私の意識は別の場所に向いていた


……
……髪の毛が、すごいことになってる


じっと、ひさとさんの頭を
爆発した髪の毛を見つめる


あちこちぴょんぴょん跳ねてて


……なんか…花菜や優みたい


モルモットみたいなふたりの姿を

毎朝恒例のその姿を思い出して



「…」


「…………えっと……」


少し驚いたようなひさとさんの声に
はっと我にかえる


「!あ、ご、ごめんなさい……っ」
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