ことほぎのきみへ
……
……
……


その後

仕事先へ向かう矢那さんと一緒に
ひさとさんの家を後にして

矢那さんの車で駅まで送ってもらった私は
そこからまた電車に乗って、家へ帰った


家へ帰ると
固定電話に留守電がたくさん入ってて

そのほとんどが花菜や優、お父さんからで
謝罪の言葉や私を心配する声だった


充電切れしていたスマホにも
着信やメールがたくさん入ってて

私は慌てて、電話をかけて
皆に自分の無事を伝えた


丸1日
連絡がつかなかったものだから
皆、ひどく心配していて

今日も連絡が取れなかったら
家に帰ってくるつもりだったらしい



……私がおばあちゃんから色々言われた事を
花菜から聞いたと言うお父さんは


『……また、嫌な思いをさせたな』

『すまなかった』


と、辛そうに私に謝った




「…大丈夫。
本当に、もう大丈夫だよ」


『…』


「お父さん、前に言ってくれたよね
『いろはのせいじゃない』って」



……昨日まで、その言葉を受け入れられなかったけど



「……同じ言葉を、貰ったの」



全部、話した上で

それでもそう言ってくれた


何回も


「おばあちゃんとは
まだ『普通』に話せないし会えないけど」



『自分のせい』って檻からは抜け出せても


おばあちゃんに対しての恐怖心はまだ消えない

根っこに染み付いた痛みや恐怖、罪悪感を
綺麗さっぱりなかったようには出来ない


それに

私がそれを無くせたとしても
おばあちゃんはきっとそうじゃない



昔のように笑い合えるようになるには
すごく時間がかかると思う


もしかしたら
この先も溝を埋める事は出来なくて
ずっとすれ違ったまま終わってしまうかもしれない


最後まで私はおばあちゃんに
嫌悪されて、憎まれたまま、恨まれたまま
別れる事になるかもしれない
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