ことほぎのきみへ
気づき始めた気持ち
「もー……なんで夏休み明けにテストなんてあるの」

「あるもんはしかたねーだろーが。
って、おい、亜季寝るな」

「うー…寝るー……」



夏休み明け

放課後の教室にて


頬杖をかきながら教科書を眺めて
ぐちぐち文句を言うゆうり

さっきから何度も同じセリフを繰り返すゆうりに呆れながらも声を返して
隣ですでに諦めモードで眠りにつこうとしていた亜季の頭を軽く叩く一樹


3日後のテストに向けて
皆で追い込み勉強をしていた



「あれ、でもゆうり成績いいよね?」

「理数系だけね。文系は壊滅的」

「得意科目あるだけいいじゃん、ゆーちゃん達は
私なんて全科目ちんぷんかんぷん」

「だから、俺が教えてんだろうが
口より手を動かせ」



普段から真面目に授業を受けてて
要領のいい一樹は成績優秀
そこまで勉強しなくても
テストでは常に高得点をキープしてる

私達の…特に亜季のために
他校のゆまちゃんと一緒にいられる貴重な放課後の時間を削って、こうして勉強を見てくれてる



「かず君かず君、質問です」

「なんだ」

「人生にこんな公式必要ないと思うんですが」

「知らねーよ」

「世界史とか日本史とか…
過去にとらわれちゃいけないよ、今を生きなきゃ…」

「黙って手を動かせ」


悲しそうに歴史書を眺める亜季に一樹は
少しいらっとした口調でそう言って
亜季に問題集と参考書を投げつけた



……ゆうりや私は得意科目がある分、まだいい

苦手な科目だけ重点的に勉強すれば
なんとか赤点は回避できるから

だけど、勉強嫌いの亜季は本当に危ない

放っておいたら赤点のオンパレード

世話焼きの一樹のおかげで
毎回、なんとかぎりぎり赤点を回避してはいるけど…
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